松下達彦:具体的に確かめたわけではありませんが、たぶん本当だと思いますし、似たような話はアメリカに限らずよく聞きます。つい最近、ニュージーランドのいくつかの大学で、やはり同じようなことが起こり、それに対する反対運動も起こり、「一命をとりとめた」学科や専攻もあったようです。仕事がなくなった先生は、失業保険があればそれで食いつないで、その間にほかの仕事を探すしかないでしょう。 アメリカでは、(法律を調べたわけではないのですが)日本に比べると雇用者の立場が強いためか、財政悪化などの経営上の理由で簡単に教員を解雇できるようです。また、大学はどうかわかりませんが、教員が一時解雇(レイオフ)されることもあるようです。人事とは違いますが、奨学金なども景気がよいときには多くなりますが、景気が悪化するとあっという間に減ってしまうとも聞いたことがあります。アメリカは、日本に比べると、財政上の理由で、いろいろなものが増えたり減ったりすることが多いように見えます。 また、学生達に人気のある言語は、時代によって変わります。私が学生になるころまでは、日本では、英語の次に学習者の多い言語はドイツ語やフランス語で、ロシア語などもかなり多かったと思いますが、90年代以降は中国語、スペイン語、韓国語などの学習者がかなり増え、相対的にドイツ語やフランス語の学習者は減ったと思います。ロシア語は改革開放が進んだ時代には増えたかもしれませんが、現在のように他国との関係が悪化すれば、学習者は当然減るでしょう。このような社会状況の変化に伴う学習者数の変化に応じて、教員の配置も当然変わります。ニーズの減った言語の教員は誰かが退職しても補充はせず、代わりに別の言語の教員を補充するといったことです。ですので、日本でも、突然の急激な改廃はアメリカほど多くないかもしれませんが、やはり社会的ニーズの変化に応じた改廃は行われています。 なお、アメリカは英語圏で、地理的にも(同じ英語圏のカナダと)スペイン語圏のメキシコ以外に接しておらず、外交的にも孤立主義的なところがあり、特に内陸部などでは、外国語教育の重要性が相対的に低いと感じられているのかもしれません。そういったことが、簡単に言語学部や第二言語を教える学部がなくなるということと関係があるような気もします。要は英語ができればあまり困らないので、外国語を必死にやらなくてもいいと思っている人が多いのかもしれません。(イギリス、カナダ、オーストラリアなど、他の英語圏諸国が同じだとは思いませんが。)(Read more)