小川仁志:AIの進歩はめざましいですね。いまや文学などの芸術作品も高いレベルで創れるといわれていますね。その意味では、雑談ぐらい十分できるといえそうです。ただ、雑談とは何かという点が問題になってきます。一般に雑談とは、特にテーマを決めることなく、とりとめもなく対話することだと思われています。まさにその通りなのですが、だからといって簡単なことではありません。何を話してもいいわけですし、どういう展開になってもいい。それでいてちゃんと話が続く必要があります。さらには、退屈しないようにしなければなりません。そうでないと雑談は終わってしまうでしょう。議論などの話し合いと比べると、別にする必要のないコミュニケーションなのですから。その意味での雑談をしようとすると、高度な知性とテクニックが要求されてきます。AIが文脈や相手のバックグランドまで読み取れるなら、このレベルの雑談も可能でしょう。ただ、雑談が無意味な言葉のやり取りを意味するとしたら、AIには難しくなってくる可能性はあります。無意味といってもあくまで人間にとってはそれが意味があるのですから。単に溜息をついて、たまに一言ぼそっとつぶやくだけのやり取りとか。雑談が人間の営みとしてカテゴライズできない雑多なものである以上、それはAIの能力を試す限界事例の一つになるのかもしれませんね。