橋本 省二:イプシロン・デルタ論法。なつかしいですね。今もやってるんですか。頭の体操として楽しかったという記憶はありますが、簡単なことを小難しく言ってるだけだという気もします。数学の専門家以外であれが有用だという人はいないんじゃないでしょうか。微分なんて、素直な関数以外では役に立たないですもんね。あ、そうか。使えない場合を排除するための念入りな理屈ということかも。
でもね。そんなにつまずいたり転んだりするほどのことでしょうか。頭のなかで例を思い浮かべながら読んでいくと「そりゃそうだ」の連続だったりしませんか?
テスト漬けの高校生活を終え、じっくり考えることを大事にする学問の世界に触れて、大学に入った実感が湧いてきたりしませんか?
わかりやすいことがもてはやされる、コスパが重視される軽薄な世界から一歩踏み出した気がしませんか?
学問を積み上げてきた先人たちの偉大な足跡への尊敬の念を抱いたりしませんか?
だんだん記憶がよみがえってきました。本屋で高木貞治『解析概論』を何時間も立ち読みし、数週間後に意を決して買った帰り道の興奮が。だからといって若い方に同じことをおすすめするわけではありません。おすすめしたいのは、思いっきり背伸びすること。ぜひ楽しんでください。