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以下は私の単純な思いつきに過ぎませんので、あまりピンとこなかったら無視してくださってかまいません。一般的な理論や深い根拠があって書いているわけではありません。

ご質問を読んで思ったのは、あなたのいう「承認欲求」をもう少し具体化してみたらどうかということでした。「承認欲求に振り回される」というけれど、あなたがいう「承認欲求」とは具体的に何なのか。これはどこかの本に答えが書いてあるものではなくて、あなたご自身が過去の経験からていねいに探ってみるという話です。

「人に認めてもらえるかどうかによってどの行動をするか決める傾向がある」とのことですが、それをもうちょっと生々しく、具体例によって肉付けして列挙してみましょう。「人に認めてもらう」といっても誰でもいいわけじゃないですよね。どんな人に認めてもらうのが、あなたの心に響くのかを注意深く調べるのです。

また、ありとあらゆる行動について他の人の承認が気に掛かるわけでもないですよね。自分の行動のうちこういうものについては、自分の判断で特に問題はないけれど、こういうものについては他の人の承認がないと不安になる。その分類作業をしてみるのはいかがでしょうか。

なぜそのように思ったかというと、当たり前のことですが、自分がいったいどんな状況で振り回されやすいのかを知るためです。「承認欲求に振り回されない/される」というのはゼロ/イチではありませんよね。ある部分では他の人の評価を大切にする。ある部分では他の人の評価を無視してでも自分の考えで判断したい。

そのようなバリエーションのなかで、あなたご自身が「ここについては、本来は自分の考えで進みたかったけれど、他の人から認めてもらうことを優先するあまりに、不本意な方向に自分の時間を割くことになってしまった」と困っている事例があるのだと思います。そこを丁寧に分析して、そのような困った事例を少しでも減らすこと、あるいは程度を抑えることが現実的な道ではないかと想像します。

いままで他人から認められることをめちゃめちゃ気にしていたのに、あるときからまったく気にしなくなったということが起こるとは思いにくいからです。

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話は変わりますが、「人に認めてもらえるかどうか」というときの「人」には「自分自身」は含まれないものでしょうか。自分が何かの活動をして成果物ができたとします。そのときに「結局他の人からはその成果物を褒められることはなかったけれど、自分自身としてはこの成果物のこの点はよくできたと思う。その点で、私はこの活動をたいへんよく達成することができた」のように自分自身に対して評価を下し、自分を認め、褒めるという経験はありますか。

自分の興味や好奇心はもちろん大事にするとして、自分は何か活動する存在で、それを評価するのは他の人という図式から離れてもいいのではないかと思いました。自分が自分を応援する。自分が自分を肯定的に評価する。自分が自分の存在を認めてあげる。承認欲求そのものを問題視するのではなく、それが他者から満たされるものだという発想を変えることは大事かもしれないと思いました。

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最後になりましたが、「自分自身」と「自分の成果物」とを分離することは重要です。

たとえ、自分の行動・活動・成果物が誰からも認められなくても、それは自分自身の価値とは無関係であると思えるかどうか。

自分の行動・活動・成果物がいくらすばらしいと評価されても、それは自分自身の価値を高めるものではないと思えるかどうか。

「自分自身」と「自分の成果物」を分離するというのはそういうことです。この分離がうまくいかないと、承認欲求から自由になることは難しいと思います(承認欲求から自由になるというのは、承認欲求を否定するという意味ではなく、承認欲求に縛られる状態から逃れるという意味です)。

以上、思い付くことを書きました。

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以下はもしかしたら関係のあるかもしれない読み物です。

◆承認欲求と自己満足から逃れたいけれど、どうすればいいか

https://mm.hyuki.net/n/nfc588293f21d

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結城浩

EngineerWriter

本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。文章を書くこと、学んだり教えたりすること、プログラミング、数学、人と人とのコミュニケーションなどに関心があります。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。アマゾンの著者ページは https://link.hyuki.net/amayuki にあります。なお、私は数学読み物を書いていますが、数学科出身でもありませんし、数学の研究者でもありません。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。〔ゆうき・ひろし〕