橋本 省二:「電子は波である」。それは何となくイメージできる。でも「光は粒子である」というほうは意味不明。私もそう感じていたのを思い出しました。無理もないんです。前者にはシュレーディンガー方程式があってその解をどう解釈するかを量子力学でみっちり学びますが、後者についてはお話だけですからね。ちゃんと理解するには場の量子論が必要になります。これはまた1ステップ面倒な話です。仕方ないので、ここでもお話だけで我慢してください。
ご質問の気持ちはわかります。光(電磁波)は移動しているんだから、そのエネルギーは毎秒何ジュールという感じで届いた時間単位で数えるべきなのに、E=hν
にはその時間指定がないじゃないか。これではどれだけの光に対するエネルギーかがわからない。どうしてくれるんだ。ついでに単位面積あたりに受けたエネルギーにしないといけないんじゃないか。ごもっともです。光が運ぶエネルギーをそう数えるのはとても自然ですね。
しかし、いま問題にしているのはもう一歩深い話なんです。単位時間、単位面積あたりに光が運んだエネルギーを測定したとしましょう。ただし、ごくごく弱い光を考えてください。極限まで弱い光です。そこでようやく光の量子性が見えてきます。光の強さには最小単位があって、1つ2つと数えられる。その一つひとつが光子に相当します。単位時間や面積にかかわらず、最小単位は一つの光子なんです。その光子がもつエネルギーは周波数で決まっていて
E=hν 。だから、ここでは「単位時間あたり」という数え方は関係なくなっちゃうんですね。
私たちが通常目にする光はこれよりはるかに強いので、光子1個2個という単位では膨大な数になります。だからそういう数え方だと逆に不便なんですね。むしろ「単位時間あたり」とか決めるほうがわかりやすいでしょう。
では、光子1個を測るには何秒必要か。ここも少し注意が必要で、十分に長い時間をかけないとエネルギーを精度よく決めることはできません。これは不確定性原理といいますね。光子1個のエネルギーを正確に知るには、ほんとは無限の時間が必要なんです。ただ通常の測定では1秒とかいう時間は十分に長いと考えてもよいでしょう。
これでお答えになっているでしょうか? 量子の世界はどこまでも不思議です。ぜひ味わってみてください。
では質問です。真っ暗闇に行けば、私たちの目で光子を1個2個と数えることはできるんでしょうか?
数個からなら見えるという実験結果があるようですね。実験によっては1個でも見えたという例もあるみたいです。これはやってみるしかないでしょう。暗い部屋で布団にもぐって目をつむり、光子の検出を試みてみてください。残像とかゴミみたいなのが見えなくなるまで我慢します。ときどきピカッと光るものが...
、というのを私は毎晩試しているのですが、ついつい眠ってしまい未だ成功したことはありません。