大谷栄治:津波を再現するには,水理実験とともに,数値シミュレーションが盛んにおこなわれており,水理実験でカバーできない現象も解析されています.水理実験で再現が難しい津波現象や海面変動にはいろいろあります.すぐ思いつくのは,過去の津波の証拠となる海岸に打ち上げられた巨礫すなわち津波石です.この巨礫の移動を解明するには,水理実験のみでは難しそうです.また,火山噴火にともなう津波現象も水理実験では再現は難しそうです.津波にも火山噴火や海底の地滑りが原因ものもあります.火山噴火が原因となった津波の例として最も有名なのは、1792年に起きた雲仙普賢岳の眉山崩壊による津波です(1).また,昨年(2022年)1月15日におきた,トンガ沖海底噴火にともなう海面変動は,通常の火山津波とは全く異ります.これは,火山噴火などで空気が振動して発生する大気の波(大気境界波)の一つの「ラム波」が原因となった海面変動ではないかと考えられています(2).このような異常な海面変動も通常の津波の水理実験装置では再現できないでしょう.
参考文献
(1) https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuwanobuo/20220516-00296043
(2) https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20220524_g01/