小田部正明 (Masaaki Kotabe):日本には「出る釘は打たれる」という諺がありますが、日本では自分を誇張しないことが美徳とされていました。私がアメリカで大学で教授として働くようになり、研究者としていかに良い学術論文を何本出版できるかが教授の主な評価基準になることは知っていました。アメリカの研究大学の多くは実力主義のメリットベースで給与が決まります。大学で自分の所得を上げようとするために、学術論文の数・質ばかりでなく、いかに自分は大学の為に貢献してきたかを数年に一度くらい学部長に訴え、自分の大切さを強調したいと所得の増分は急激には上がりません。また他の良い大学から引っ張られて仕事を得てくることによって、それを学部長に突きつけることによって所得を上げてもらうこともできます。このように、アメリカでは「出る釘は更に出す」ことが必要になります。私の育った日本の文化との違いであり、慣れるまでは私も躊躇していたことがあります。