菅野 由弘:私も、地獄まで墜ちろとは言いませんが、煉獄くらいまでは、墜ちて然るべきかと思っています。私は、心を込めて、お客様に聴いて頂きたいと思って作曲しています。もちろん、それは、お客様に媚びるというのとは違います。が、やはり、一人一人の方に聴いて頂くために､音楽を届けたいのです。こちらは一人、お客様は不特定多数だとしても、一人一人に伝えようという意識を持っています。それが、人から人へ音楽を届ける間に、流通させ、中間搾取する仕組みである「サブスク」が入ってしまい、「普及に貢献している」という名の下に、作曲家とお客様を分断していると感じます。この利便性は、作曲家の創作意欲と収益を削ぐものと言わざるを得ません。ソフトウエアなどのサブスクリプションとは一線を画すものと思いますので、全ての「サブスク」を否定するものではありませんが、こと創作物に関しては、「煉獄くらいまでは、墜ちて然るべき」と考えます。