高橋賢:私は会計学を研究しています。「この理論はどう役に立ちますか?」と聞かれた場合には,「自社の会計システムを構築するときに,設計思想を決めるのに役立ちますよ」「会計システムの構築の時間と手間が省けますよ」と答えています。 ただ,抽象化された理論は実際に役に立たないという誤解を招いていることは確かです。会計学の理論は,それまで実務でバラバラに行われていたものから普遍的・一般的と思われるものを抽出し,抽象化することで組み立てられます。その理論をわかりやすく解説しているのが教科書です。よく(半端な)実務家のヒトから,「教科書なんて実務では役に立たないよ」ということをいわれますが,それは読み込みと理解の不足から来ている言葉です。会計システムを構築する際に,理論を知らずに闇雲に一から突き進んでいっても,通る必要のない試行錯誤を繰り返すことになります。理論をしっていれば,ある程度の骨格は理論通りに作り,実態に合わせてカスタマイズすれば良いので,その試行錯誤の回数を確実に減らすことができます。有名な企業の社長さんで,「経営は教科書通りにやればいいのだ」ということを仰る方が何人かいらっしゃいます。 私の場合,会計学が実学なので割と答えやすいのかなぁ,とは思っています。(Read more)