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セレナ

確かに、遺伝情報が記された二本鎖DNAから短い一本鎖DNAを転写し、RNAが関わらない形で進化したリボソーム的なもの(リボソームは本来RNAとタンパク質の複合体)がアミノ酸をつないでタンパク質をつくる進化に向かう手もあったでしょう。ではなぜそうならず、DNAよりも不安定なRNAが残り続けたのでしょうか?いくつか理由を挙げてみます(①は一般に言われていること、②と③は私個人の仮説に近いです)。

①これが一番の理由でしょうが、タンパク質発現量を素早く調整するためです。生き物は外界の環境変化に適応するため、タンパク質の発現量を調整しています。もしゲノムDNAの転写産物が安定だったらどうなるでしょうか?転写を促進して(転写産物を増やして)タンパク質の発現量を上げるのは簡単ですが、減らすときはどうすればいいのでしょうか?。転写産物の量が減るのを長々待つしかないですね。これでは環境の変化への適応が間に合いません。では転写産物が不安定だとどういったメリットがあるでしょうか?転写産物が分解されやすいのでつねに転写をし続けなければいけませんが、転写を抑えれば転写産物濃度がすぐ低くなるのでタンパク質の発現量は調整しやすいですね。タンパク質発現のためにDNA情報を写しとったものの安定性が低いというのは、外界の環境に応じてタンパク質発現量をすぐに調整できるという面でメリットがありますね。

②DNA鎖の構成単位であるデオキシリボヌクレオチドは、まずRNA鎖の構成単位であるリボヌクレオチドが合成され、2'位の水酸基(-OH)が除去されることで生合成されます。そもそもDNAを合成する段階でRNAが一度登場しているので、RNAを退場させることはできなかったとも考えられます。

③DNAは核内に納められており、核の外側に存在するものは基本的に外来のDNA(ミトコンドリアDNAはミトコンドリア内にあるが)であるため、細胞質ではDNA分解酵素が働いています(だからこそDNAではなくRNAを遺伝情報として持つRNAウイルスが存在しています)。mRNAの役割を一本鎖DNAで置き換えたらどうなるでしょうか?細胞質内のDNA分解酵素で分解されてしまいますね。つまり核内外両方にDNAが普遍的に存在すると、細胞に侵入したウイルス由来などの外来のDNAを区別して分解できなくなってしまいます。*一本鎖DNAも部分的に二重らせん構造をとるので(私の経験的に一本鎖DNAの電気泳動バンドも高濃度エチジウムブロマイドで染色可能です)、二本鎖DNAだけを分解するDNA分解酵素で外来DNAだけを分解するのは厳しいでしょう。

上記のような理由から、RNAが進化の過程で退場せず、今も残り続けているのだと考えられます。

2 years ago

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