小川仁志:どんどん我慢できなくなっている。それは経験に比例して、色々なものが早く見えてくるからなのでしょうね。人間が何かに我慢できるのは、「未知の世界」だからです。辛くても、疑問を抱いても、どうなるかわからないなら様子を見ます。そして耐えるのです。でも、どうなるかわかっているのに、我慢することなどできません。ただ辛くてしんどい時間を過ごすだけですから。ということで、経験を経れば経るほど、我慢できる期間は短くなっていくものなのです。みんなそうです。もっとも、仕事を辞められない環境や条件があるなら話は別です。家族を養うためにどうしても我慢しなければならないとか。そうでない限り、人間は我慢などできません。で、辞めてしまうのです。何度も何度も。だって何の制約もないのですから。そしてまた新しい環境に身をゆだねようとするわけです。でも、経験が災いして、二の足を踏んでしまうことがある。そんな時、絶対的な自信のあるスキルがあれば、堂々と入っていけるのかもしれません。ただ、それはまれです。「これならプロよ!」などといえるものを持っている人はそんなに多くないと思います。それなりにできることはあるかもしれませんが。ということは、別に自分のスキルなど気にする必要はないのです。そういうスキルを求められている求人じゃない限り、向こうも期待していませんから。そんなに構えなくてもいいのです。もうおわかりかと思います。どう踏み出せばいいのか? 何も考えずに門を叩くことです。案ずるより産むがやすしとはまさにこのことです。ポジティブな見方をするなら、こうもいえます。主導権は相手ではなく、自分が握っているのだと。踏み込むのを阻んでいるのは、ほかでもない自分の心なのですから。ぜひ気にせず扉を叩いてみてください。大丈夫、それで死ぬわけでも、世界がひっくり返るわけでもありません。どんなに失敗しても、1日で辞めても、恥をかいても、明日はいつものうように太陽が昇り、誰もそんなことを気にせず日常を送るだけのことです。そしてあなたも、何事もなかったかのうように、また新しい扉を叩けばいいのです。心地よく過ごせる場所が見つかるその日まで。人生ってその程度のものです。どうか深く考え過ぎないように……。