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「やる気が出ないことであっても続ける方法」ということですね。私の場合は「メタに逃げる」という方法をよく使います。

「メタに逃げる」というのは、「気乗りがしない作業そのもの」に意識を向けるのではなく、「その作業を効率よく行うためのツールの開発」や「その作業にスムーズに取りかかれるような段取り」や「その作業を自分の習慣とするための方法」などに意識を向けるということです。

具体的なお話として、ずいぶん昔の話をします。

自分が個人事業主として仕事をするようになって「会計作業」がたいへん苦手でした。やる気が出ないし、つい「この作業をしている時間に文章をもっと書いた方がいいんじゃないか」などとよく考えたものです。いやになると後回しにしちゃうし、後回しになると取りかかるのがおっくうになります。その気持ち、わかりますよね。

でもさすがに会計作業が苦手というのでは困るので、会計作業を効率よくするためのツールを開発することにしました。自分のふだんやっている会計作業は定型的なものが多いので、それをいかに短時間で入力処理できるかを考え、プログラムを作りました。これは典型的な「メタに逃げる」ことになります。

結果として、プログラムを書くという自分にとって楽しい作業を進めることになり、それに付随するように会計作業を行う習慣が身につきました。プログラムの動作テストのために会計作業をしていたような時期もありました。いまでもそのプログラムの改良版を使っていますし、いつのまにか苦手意識もなくなりました。

いまのは会計作業の例でしたが、他にも、取り組むことがおっくうになる執筆作業の場合には、何かその作業のどこかに「お楽しみ」を見出そうとします。単純な「がんばったご褒美」のようなものではなく、その作業にスムーズに取りかかるためには「どんな仕組みを用意したらいいか」を考える。その考えること自体を楽しむのです。

そういった「メタに逃げる」という発想は、別の表現をするならば「自分はどういう方向ならばモチベーションがアップするのかを考える」という発想ともいえます。つまり、答えはどこかにあるのではなく自分の中にあるのです。「やる気が出ないな」というのは自分の特性ですから、「どうして、やる気がでないのか」を注意深く観察・分析し、「自分を理解する」ことによって適切な対処法を考えるのがいいのでしょう。

「メタに逃げる」というのは私なりの解決策でした。ツールや段取りや習慣づけを考えることが、私にはしっくりくる方法なのです。ですからあなたも、あなたなりの解決策があるのだと思います。その手がかりは「自分を理解する」ところにあるのではないでしょうか。

私が思うことは以上です。関連する読み物にリンクします。

◆学習のモチベーションを保つには(学ぶときの心がけ)

https://mm.hyuki.net/n/n58c376bb7e7a

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結城浩

EngineerWriter

本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。文章を書くこと、学んだり教えたりすること、プログラミング、数学、人と人とのコミュニケーションなどに関心があります。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。アマゾンの著者ページは https://link.hyuki.net/amayuki にあります。なお、私は数学読み物を書いていますが、数学科出身でもありませんし、数学の研究者でもありません。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。〔ゆうき・ひろし〕