積惟美:仕事に情熱を捧げ、自分を納得させることができるかどうかは、将来自分がどのようになりたいのかというところに依存すると思います。アートやスポーツを例に挙げられていますが、もし将来アートやスポーツで活躍することが夢ならばどうやってもファイナンス(会計)の仕事に情熱を捧げることは難しいように思います。
本題に入りますが、会計は「ビジネスの言語」です。英語圏で活躍するには英語が最低限しゃべれないといけないのと同じでビジネスで活躍するためには「ビジネスの言語」たる会計を最低限理解しておく必要があります。将来ビジネスで活躍したいという夢があるならば財務の仕事でそのスキルが身につくので、財務の仕事に納得できるかなとは思います。また、単純に帳簿や財務報告書の作成といっても、会計基準では企業の経済実態を適切に表すため、作成者に一定の裁量の余地が認められています。すなわち、同じ取引でも企業の経済的実態が異なれば、異なる会計処理を行うことが許容されています。何も考えず会計の仕事をするのであれば退屈な作業かもしれませんが、自分の会社や取引の実態を適切に把握したうえで、その実態を適切に表すための会計処理を行ったり、報告書を作成・表現することには
“アート”的な側面が少なからずあると思います。また、ビジネスは常に変化しますので、既存の会計基準では対応できない取引が日々生まれています。そうした取引を原則に沿っていかに適切に会計処理するかを考えることは単純作業ではできないでしょう。
さらに言えば、ファイナンス(会計)の仕事といっても結構色々あります。帳簿を取るのは経理の仕事ですし、投資家に分かりやすいように報告書を作ったり、IRを行うのは財務の仕事です。いずれにせよ、適切な会計の仕事を行うことは、企業(経営者)と投資家との情報の非対称性を埋めることにつながり、それにより企業の資本コストは低下し、ひいては企業価値が向上します。他の部門に比べて財務やファイナンス部門は直接的に企業価値と関連する仕事であるといえるので、企業にとって非常に重要で、難しい仕事です。
まとめると、ファイナンス(会計)の仕事に情熱を持つためには、(1)ビジネスで成功するなど、会計の仕事をすることによりどのようなスキルが得られて、それによって自分の夢に近づくことができるかどうかをしっかり想像する、(2)単純な作業とはとらえずに、複雑で膨大な企業活動の経済的実態を適切に表現するためのツールとして会計を捉え、それを実現するために頭を使う、ということが重要だと思います。
会計は企業が企業である限り必ず必要になるものなので、つぶしが効くスキルであり、それにたずさわっておいて損はありません。会計学は極めて実務的な学問ですが、勉強してみると意外にアートな側面や頭を使う側面が見えてくると思います。一度会計学やファイナンスの理論を体系的に学ぶことをオススメします。頑張ってください。