大谷栄治:宇宙物理といってもかなり幅広いので,宇宙のどんなことに興味があるのかにもよると思います.質問者は高校生でしょうか?それとも大学生で将来大学院を望む方でしょうか?それによって回答は異なるかもしれません.
自然や宇宙は,縫い目のない織物(シームレス)です.宇宙物理という領域は自然にはありません.物理学,化学,地球科学,生物学などの区分は人間が作った枠組みで,人間の都合による分類です.また,教育の都合で区分したもので,自然はその中に納まらないということをまず理解しましょう.科学研究では,それぞれの既存の体系の間の隙間に,大事な忘れられた宝が眠っています.そこが研究のねらい目です.そのために,複数の分野の専門家の共同と協力が必要になっています.宇宙を知りたいなら何から勉強を始めてもよいでしょう.なんでも役に立つと思います.
物理学科からのアプロ―チもよいでしょう.ただ,この場合の欠点は物理で解決できるものしか調べなくなったり,宇宙の本質的な問いから外れてしまう傾向にはあ注意が必要です.
惑星科学から入ることも可能です.宇宙の複雑な疑問に向き合い問題を発掘できる可能性がありますが,解決が難しいことも多いかもしれません.解決には物理学の素養を必要なることが多いでしょう.必要になった時に独学に近い状態で勉強する必要があります.これは,かなり苦労しますし,力量がないとかなり難しい可能性があります.
現代の宇宙研究は,様々な分野の研究者の共同作業で,ひとりではできないことが多いです.共同作業なので,個人のスキルや専門性が大事になることが多いです.宇宙探査など大きな共同研究プログラムを取りまとめる科学者には,宇宙や惑星に対する強烈な興味と問題意識をもった人が適しています.
もしあなたか物理系の学科にいるのならば,問題意識によっては,大学院で地球惑星科学の学科に移るのもよいかもしれません.もし,地球惑星科学系の学科にいるならば,宇宙物理系の大学院に移るのもよいでしょう.後者は,かなり大変で苦労するかもしれませんが,やり切ればかなりユニークな宇宙惑星科学者になるでしょう.既存の科学の体系やカリキュラムはらはみ出た学びをお勧めします.