シクラメン🌱いろいろ本でます:まず違いから回答させていただきます。 Web媒体の書きものと紙で出版されているものの大きな違いは『有料かどうか』にあると思っています。つまりWeb媒体の書きもので読者さんが消費するのは時間だけであるのに対して、紙で出版されているものは時間に加えてお金も消費することになります。 そして次に作者として違いを意識しているかどうかですが、当然意識をしています。先ほどの話とも関連してくるのですが、紙本は有料である以上そこにWeb版にはない付加価値を付与しなければと考えているからです。それは書籍のオリジナル展開であったり書き下ろしであったりと、『お金を払って良かった』と思われるような構成を心がけています。 また私はWeb版でまとめてしまっているので関係ないのですが、他の方だと1冊でまとまるようにするような修正を入れていたりと、終わりのある紙本ならではの構成に修正されることもあると聞いたことがあります。 読まれ方についても違います。Webだと『1話あたりの面白さ』というところが大事になってきます。連載形式で続いていく関係上、その日に更新された話が面白いかどうか。あるいは、これから面白くなっていくかどうかにかかっています。しかし、書籍だと『1巻あたりの面白さ』が大事になってきます。読まれる範囲の最小単位の違いから発生するものですが、そこが違う以上作り方なども変わってきます。(Read more)
西山暁之亮(作家):普通の小説とWEB小説は別物です。過激なことを言えば、WEB小説は小説ではありません。文字媒体エンターテイメントです。 前提として「物語」にかんして言えば紙もWEBも関係ないと思います。 その上で本質問の書かれていない趣旨として「読まれる為のテクニック」という観点と「商業と無料WEB小説」という点でいえば、読まれ方について大きな違いがあります。 まず紙で印刷されるものについてですが、これは原稿用紙=読者の視界に飛び込んでくる世界というものを強く意識して書くという事が主な差であると思います。 意外にも小説も漫画と同じで見開きや次のページという概念があります。なので、本当に気をつけている方は次のページにインパクトを持っていく事や、漫画のように右上1コマで導入〜最終コマでヒキというようにある程度原稿用紙でできる導入と次への引きを意識して書いたりと紙で読む読者に対してのテクニックを気にされている方はここを意識しています。 また紙媒体では縦書きが主なので、それについて読みやすい……というよりリズムのとりやすい文章というものもありますし、余白や改行を巧みに使用する方についてはそこも作品の魅力として描くことがあります。 また本という媒体の特性上、年齢層が高くどっしりと構えて本を読みたいという方も多いので(ラノベもそう!)、文章力も魅力の一つとして意識して書く必要があると感じました。 なので流行というより作家性で買われることも多いですし、流行が影響するのはジャンルまでかと思います。 一方無料WEB小説は正直にいえばあれは小説とは別物の文字媒体エンターテイメントなので、小説の書き方すらが該当しないものです。 一番の理由はお金を払っていない無料のもので、読者は時間というお金以上のコストを支払うことから第一話や導入、あらすじやタイトルに至るまでの比重が本に比べて高いと感じています。 また紙媒体が料理と例えるならばWEBはスナック菓子のようなものなので、とにかくストレスなく進行する物語が好まれます。より読者の欲求にダイレクトにリーチして、かつ自分の分身たる主人公が読者になり変わって欲求を満たす事が重要です。 あるいはTRPGやゲーム、JOJO的なシステムハック的な面白さを刺激して小説サイトのコメント機能などを通じコミュニティ的な面白さを通じてどんどんと読者が盛り上がっていくというのも特徴の一つだと思います。 上記の理由から、WEB小説はいわゆる小説的な起承転結をそこまで重要視せず、流行という「今読者が一番手っ取り早く読みたい」=スナック感覚にリーチするのを大前提です。さらには作家性を重視せずある程度のお約束やお作法を押さえつつも流行とはちょっと違った面白さを見せるため、とにかくタイトルとあらすじ、そしてジャンル選定が大切で中身はまあそんなに、テクニックなんて字下げすら不要(実際そういうものすら無視しても売れているものアニメ化するものは沢山あります)というのがWEB小説だと思います。 時折、流行を外れても売れたぞ〜というのもありますがそれは細かく見ていくとWEB小説お左方に則っていたり、今のジャンルが傷食気味であったり、はたまたその人のその本が次の流行の最先端だったり、今の流行の上位互換であったりと決して流行やWEB小説の根幹に外れたものではありません。 最初に戻りますが上記理由から本という紙媒体を前提とした小説という分野と、WEB小説というものはそもそも似て非なる別物です。当然文字という共通したものを扱うので、ベン図のように重なり合うテクニック的なものもあります(WEB小説でいうと本でいう引きが1話の最後にのしかかってくる)が、そもそも違うものとして出発しないとクリエイター側に立った時痛い目を見ます。 ここから猛毒を吐くと。 前者でうまくいかなかったので後者に移るというとそもそもジャンルが全く違うので相当苦労します。後者で上手くいって前者に移ろうとしても、そもそも文字を書く力があるだけで小説の力が無いのでこちらもまた断念してしまうというのもかなり多い作家の失敗ケースです。どちらが優れているかではありません。ジャンルが違うのです。 ということで明確な差があるよ、というお話でした。(Read more)