横田有為:3Dプリンターの技術革新は目覚ましく、日々様々な工業製品が作製可能になってきています。ただ、現時点ではまだ鋳造からの加工で作製された部品を代替できない製品もあります。
金属の3Dプリンターには積層造形といった金属の細かい粒子をレーザーで溶かしながら層状に部品を造形する技術が多く使われています。金属の粒子を隙間なく敷き詰め、部品の設計図に従って、必要な部分だけをレーザーで溶かして目的の複雑な形状を造っていくわけです。この時に大きな問題となるのが、作製した部品の密度(緻密性)です。粒子を溶かしながら造形する際に気泡などが内部に入ってしまい、これが最終的な部品の密度を下げる要因となります。この密度の低下は、部品の使用時における耐久性の低下や使用期間の短時間化などを引き起こすことに繋がります。密度が低すぎる部品では、液体などが部品の内部に浸み込むことも起こります。研究者の努力により、3Dプリンター製品の緻密化技術も進んできており、材料によっては高密度の製品が作製できていますが、例えばタングステン(W)などの材料ではまだ高密度の3Dプリンター製品は実現できていません。
また、上記の通り金属の3Dプリンターには細かい粒子を用いますが、高品質な部品の製造のためには粒径を揃えた金属粒子が必要になります。この金属粒子のコストが最終的な製品コストに影響します。現状では、そこまで複雑な形状を持たない部品では、鋳造品の方が3Dプリンター製品よりも製造コストが低いものが多くあります。
今後、3Dプリンター製品が鋳造品に広く置き換わっていくためには、品質とコストの点をクリアすることが重要だと思われます。