ドクターアキヤマ(秋山泰伸):エネルギー密度は、質量(または体積)当たりどれだけエネルギーを蓄えれるか、という考え方になります。 エネルギーはJ(ジュール)という単位であらわすことができますが、電気の世界では似た単位で電力のW(ワット)を使いますよね。これは1秒当たりのエネルギー(J(ジュール))という意味で消費電力6WのLEDは1秒で6Jのエネルギーを使いますよというになります。さらにWh(ワットアワー)というエネルギーの単位も使いますが、例えば6Whは6WのLEDを1時間使った時のエネルギーと考えることができます。つまり6J/s×3,600sで21,600Jと同じことになります。 話を戻しまして、W(ワット)はV(ボルト;電圧)×A(アンペア;電流)で表せるというのは中学校で習います。さらにA(アンペア)は電気回路を流れる電荷量C(クーロン)を時間で割ったもの、つまり、1Aだったら1秒で1Cの電荷が電気回路を流れていることになります。さて、W(ワット;1秒当たりのエネルギー)=V(ボルト;電圧)×A(アンペア;1秒当たりに流れる電荷量電荷量C(クーロン))という式ですから、エネルギーJ(ジュール)=V(ボルト;電圧)×C(クーロン;電荷量)になりますよね。私は高校生の時に化学の先生から、「クーロン・ボルトはジュールにな~る」と憶えなさいと言われた記憶があります。確かにまだ憶えていますよ、先生(笑) さて、電池のエネルギー密度の話に戻りますが、上の話から、蓄えられるエネルギーは、どれだけの電圧が発生して、どれだけの電荷量が蓄えられるかを見積もって、その掛け算することでエネルギーが見積もれることになります。さらに、必要な質量(電気を発生させるときに用いた物質の質量の総和)で割ればエネルギー密度になりますかね。 ではリチウムとマグネシウムを用いた電池を考えてみますと、 まず、電圧ですね、これは、一般的にはイオン化傾向が大きいものを用いた方が有利になると言えますが、正極と負極の兼ね合いで決まり、定量的には標準電極電位等を用いて計算することになります。まあ、でもリチウムの方が有利ですね。実際にリチウムイオン電池は3~4V程度の電圧なのに対して、研究段階のマグネシウム電池は1.5~3V程度みたいです。 次に蓄えられる電荷量ですが、きわめて単純に考えると、リチウムは1価の陽イオンになりますから、1モルのリチウムがあったら1モルの電子を放出できる(放出できるということは蓄えているとも言える)ことになります。一方、マグネシウムは2価の陽イオンになりますから、1モルのマグネシウムがあったら2モルの電子を放出できることになります。実際にはどのような化学反応を用いるか、また、全てイオンにはできないし...などいろいろ絡んできますけどね。 ここまでまとめると、電圧(イオン化傾向が関与)としてはリチウムが有利でマグネシウムの1.5倍程度(かな)、電荷量としてはマグネシウムが有利でリチウムの2倍程度、とすると、その掛け算としてはリチウムもマグネシウムも同程度から、やや、マグネシウムが有利...となりますね。でも、まだ忘れていけないのは"密度"という考え方です。つまり、1kg当たりとか1g当たりという考え方。上の計算は1mol当たりだったらややマグネシウムが有利と見積もれるが、という話です。 リチウムは6.9(kg/kmol)で、マグネシウムは24.3(kg/kmol)ですから、結局、リチウムがはるかにエネルギー密度は高いよね!!ってなリそうなものですが....ところが、これは電極に用いる物質(化学反応に用いる物質)の質量で考える必要があるのです。リチウムイオン電池は実用化されており、例えばコバルト酸リチウムや炭素なんてのを用いています、重いですよ、コバルトが入っていますから(笑)それに炭素や酸素の質量も考えないと...それに対して、マグネシウムは金属単体で電極に用いて...なんて研究されていますから、質量の面ではマグネシウム電池がかなり有利になります。まあ、リチウムイオン電池は実用レベルで考えて、マグネシウム電池は研究レベルで考えていますから、土俵が違うのですけどね。 つまり、よく言われるマグネシウム電池がエネルギー"密度"が高いとうのは電極材料(用いる化学反応による)の影響が大きいですかね。ただし、実用化までにはこえなければいけない多様な問題があり、いろいろなところで研究を行っているというところです。 実用という面ではエネルギー密度も大事です(エネルギー密度が小さいと同じエネルギーを得るのに質量が大きくなります。例えば、自動車に積んだ場合重いバッテリーが必要になるから燃費が悪くなります。)が、リチウムはレアメタルで枯渇が懸念されていますので(コバルトもレアメタル)、マグネシウム等の地球上に豊富に存在する資源を用いた二次電池の実用化が必要ですね。(Read more)