佐藤克士/"SATO Katsushi",Ph.D.:まず文意を正しく捉える能力(いわゆる読解力)は,基本的には国語で培うべき能力でしょう。そのような能力を育成するためには,「何が問われているのか(要求されていること)」を把握する訓練を積み重ねる必要があります。例えば,小学校段階で行われる文章題指導は,一般的に,次のような流れで行われます。
①文章題を読む。
②立式する。
③計算する。
④問いに対する答えを書く。
「質問の意味を正しく理解できない子」は,①の段階で躓いているか,①→②の過程で躓いていることが予測されます。前者の場合,文章を読んだ後に「一言で言って何のお話か(要約)」や「この問題を図と言葉で表しなさい(イメージ化)」等の指導を入れてあげると②の段階に移行できるようになると思われます。一方後者の場合,文章題を読ませた後,「この問題は何算で解くことができますか」のように演算決定に支援する質問を投げかけ,演算を確定させるという指導が考えられます。具体的には,小学校で学習する演算は,足し算,引き算,掛け算,割り算の4つしか(またはその組み合わせ)ありません。上記のような演算を確定する指導を入れることで「質問の意味(=何を要求しているのか)」を理解することができるのではないでしょうか。
小学校段階を事例に技術的な側面から説明してきましたが,基本的に義務教育段階における算数・数学で求められる読解力は,①上記4つの段階のどこで(何で)躓いているかを指導者が見取り,②①で確認された躓きを学習者個々の実態に応じてスモール・ステップで繰り返し指導する以外に解決策はないのではないかと思われます。また,質問者様から頂いた本題からはズレた説明になるかと思われますが,個人的に算数・数学に限らず読解力の基本は,多読によってこそ育成されるものであると実感しております。