小塩真司:大学で心理学を学ぶステップは,理論と方法論の両輪です。
特に,心理学は研究方法論を重視します。大学のカリキュラムの中で実験,観察,調査,面接という研究方法を身につけることで,自然とその情報が信用に足るものであるのかそうではないのかの区別がつくようになります。そして,これらの研究方法(の多く)で必要になるのが,統計学(心理統計学)です。どの大学の心理学のカリキュラムでも,統計学を学ぶことも必須とされています。
というよりも,きわめて広い範囲をカバーする心理学を互いに結びつけているのが研究方法論だといっても過言ではありません。動物を対象に研究している心理学者も,脳機能を研究している心理学者も,人間関係を研究している研究者も,児童期の発達を研究している研究者も,臨床的な病理現象を研究している研究者も,共通するのは一通りの心理学の研究方法を身につけることです。「何をしているからその結論に達するのか」をある程度,理解することができるという点が,互いに全く違う研究をしている研究者同士を同じ「心理学者」として結びつけているのです。
研究方法論がわかれば,どこで情報を見てももとの論文に戻って「何をしているのか」を理解することができるようになります。「根拠をもとに真偽を見分けられるリテラシーをつけたい」のであれば,それがいちばんです。