家正則:M87の電波干渉計による画像構築は、観測で得られた限られた情報から、もっともらしいと思われる画像再現法を用いて再生されます。イベント・ホライゾン・望遠鏡(EHT)の研究チームはチーム内で3つのグループがそれぞれの方法で、ブラックホール周辺のごく狭い範囲の画像再生を試み再生した画像の平均画像をこれまで記者発表してきました。話題性もあり、マスコミ報道が過熱して、画像が「事実」のようにとらえられている面がありますが、そもそも少ない情報からの画像再現なので、一定の不確定性がつきまとっています。
今回の発表はEHTのグループとは独立な立場で、同じ観測データから、より広い範囲の画像の再生ができる別の画像再生法で解析しており、得られた中心部の画像がEHTグループの発表した画像と違うことを指摘しています。
どちらが正しいのかは、より新しい観測データを加えて検証しないと決着がつかないでしょう。
電波望遠鏡に限らず、すべての研究者を納得させられるデータと解釈が出てくるまでは、このような論争は科学の世界では常にあることで、きわめて健全な反論だと想います。