福島真人:音韻論は、特定の言語がもつ、文化的に認識できる音の単位(音素 phoneme)の研究で、例えば日本語の母音はあいうえおの五つで、それをどうあいまいに発音しても、この5つしかないですが、英語では同じあ系列でも、例えばcut
とcatは違う母音で、弁別される、そうした基礎単位の研究です。子音でも、ラ行(バ行も)は日本語では一つですが、英語はlとr(vとbも)は区別するので、I
love youをI rub youと発音すると相手に逃げられます。音声学はそういう意味での特定文化内で定義される音ではなく、物理的な音声の研究。
この弁別はのちに構造言語学経由でレビィ=ストロースが採用し、神話の基本単位を神話素(mytheme)と呼んで分析しました。文化内で定義される基本単位のようなものがあるだろうという発想です。またphonemic、phonetic、という語から、イーミック、つまり特定文化の固有な視点、およびエティック、分析者の外的な視点、という二分法も文化人類学等でよく使いますが、このルーツもここからきてます。