田口善弘@中央大学:生物だって動くときに音を立てる場合もありますよね。鳥や虫が飛ぶときにはバサバサとかブーンとか音を立てますし、馬が大地を駆けるときはかなり大きな足音を立てる場合もあります。なのでここでは生物が静かに動く、とか言った場合に、腕を曲げるような動作を考えることにしましょう。確かにこれを機械で実現しよとするとガチャガチャとかウィーンとか音を立てそうですね。 このような場合に生物が音を立てないのは生物の動きは基本的に筋肉によっているからです。筋肉の動力は微視的にみるとアクチンとかミオシンみたいな伸びたり縮んだりするたんぱく質によって生み出されています。これは基本的に化学反応なので音なんか出るはずもないんです。 これに対して人類はまだ生物の筋肉を再現して利用することはできていず、人工筋肉と言われるものは全然別の原理で動作しています。当然、化学反応じゃないので音がでることは避けられません。 まとめると生物は化学反応を直接運動に利用する仕組みを進化させたのに対し、人間は化学反応を直接運動に変換できる技術は開発できていない(例えば電池内部での化学反応で発生した電流を一度取り出してモーターを回す、など)ので音が出てしまう、ということになります。将来、人類が化学反応を直接運動に変換できる技術を開発できたら機械も無音で動作できるかもしれません。(Read more)
小林朋道 公立鳥取環境大学 教授 動物行動学 進化心理学:理由は、これだけではないでしょうが、以下のようなことも関係していると思います。 「うるさい」ということは「音を出している」ということであり、それは「空気を振動させる(無駄な)動きが起こっている」ということです。生物は、なるべく少ないエネルギーで移動も含めた動作が行われたほうが、生存・繁殖に有利であり、そのほうが自然淘汰の結果、数(子孫)を増やし、そういう種のほうが生き残ってきたのです。(Read more)