竹井邦晴:輸出規制は軍事目的で使用されるような技術及び材料についてになります。半導体関係は確かに軍事利用可能になってきますので輸出規制の対象です。 最近ニュースになっているように日本の人件費は欧米諸国に比べると安いので、うまくやればサプライチェーンになっていくこともできるかもしれませんね。ただ、サプライチェーンになるのは質も重要ですが、価格競争になってきますので日本がサプライチェーンになるということは、出来る限り安く売るということにもなってくると思います。これでは給与は上がっていかないので私はあまり良くないと思います(私見であり、考え方が間違っていたらすみません)。また中国の研究レベルはどんどん上がっており、近い将来、他国に頼らなくてもそれなりの技術を習得するのではとも思います。そうなってしまったとき、もしかするとこれまでは日本の半導体部品・材料を中国に買ってもらっていたのに、中国内部での自国供給になることで日本の半導体部品・材料が売れないということにも繋がってしまうのではと懸念しています。ただ技術流出や軍事利用も困った話なので、非常に悩ましいことだと思います。 上述しましたが、日本はもし今後欧米諸国並みに給与などをあげていくには、「世界の工場」になるよりは、アメリカのようにどんどん新しいものを開発し、高い値段で他国に売っていくという方が良いのではと思います。(Read more)
小田部正明 (Masaaki Kotabe):最近の円安の影響でドル建てで考えると日本の労働コストが多少は安くなりましたが、世界レベルで考えると他の先進国と比較して安いとは言えません。現在でも中国とかインドないしはブラジルで半導体生産に必要な高度な労働力が、日本の労働賃金と比べるとはるかに安いのが現状です。日本本土が半導体の「世界の工場ニッポン」になることはないでしょう。日本の企業はメモリーチップのような単純な半導体からロジックチップそしてセンサーチップ(例えばソニーのCybershotデジタルカメラのデジタルイメージを高度にプロセスする頭脳であり、Apple iPhoneのカメラ機能の頭脳としても採用されている)といった更に付加価値の高いタスクのできる半導体に移動していくべきです。単にメモリーチップをさらに小さくしていく技術だけでは、すでに20年程遅れを取っている日本の企業は韓国のサムソンや台湾のTSMCにはなかなか追いつくことができそうもありません。最近、ソニーが台湾のTSMCと合弁で最先端のメモリーチップを熊本で共同開発、生産することにしたように、世界最先端のTSMCやサムソンとの共同戦略は考えられます。(Read more)