積惟美:レターありがとうございます。ただ、私は通貨・貨幣や経済政策に関する専門家ではありませんので、あくまでほぼ素人の考えだという点はご留意ください。 キャッシュレス決済が進展することで、貨幣が非現金形態に変化する可能性は、超長期的にはあり得ると思います。ただ、これによる通貨政策(金融政策のことかな?)や銀行機能への影響に関しては、それほど大きいわけではないと思っております。 その理由としては、すでに現在の通貨政策や銀行機能はそれほど実態としての貨幣に依存しているわけではないからです。実際に、銀行は信用創造によって、最初に受け入れた預金の何倍もの預金通貨を作り出すことができます。これは実態としての貨幣に依存しているわけではなく、あくまで記帳上の処理によってお金が作り出されています(広義でのキャッシュレスと言えると思います)。我々利用者も相当程度にキャッシュレス化が進んでいると思いますが、銀行との付き合い方はそれほど変わっていないと思います(銀行窓口やATMを使うことが少なくなったくらい?)。中央銀行が行う金融政策も大なり小なりキャッシュレスです。 ただし、下記の点は変化があるのではないかと思います。これらの変化は基本的に、非現金化によってほとんどの人がほとんどのお金を銀行預金などに預けることになること(タンス預金のように貨幣形態でお金を貯めることができなくなるため)を前提としていますが、キャッシュレス化によってブロックチェーン上のウォレットのようなものがより一般的になり、お金が銀行預金に向かわない可能性もあるので、その点注意してください。 * 金融(通貨)政策 ・金利政策の有効性の向上 上記のを前提として、世の中のお金のほとんどが銀行預金になるため、中央銀行の政策金利政策の影響がより直接的に効果を持つようになるかもしれません。 * 銀行機能 ・経済に対する銀行の影響度が高まる 上記と同様に、銀行預金が増えることによって信用創造を通じてより多くの資金を想像し、貸し出しを行うことができるようになります。これより、経済に対する影響度が増すかもしれません。しかし、そもそも信用創造の規模は預金残高に制約されないという説(いわゆる現代貨幣理論:MMT)もあるのでそこまで変わらないかもしれません。 ・ITセキュリティの重要性の増加 暗号資産の流出事件のようなことが銀行で起こると社会システム全体として非常に問題です。そのため、非現金化が進んだ場合でも、銀行は絶対にハッキングされるわけにはいきません。そのため、銀行業務におけるITセキュリティの重要性が増すと思われるのです。もしかしたら、そうした鉄壁のシステムを構築することによって絶対に安全な非現金預金としての銀行のポジショニングが強まるかもしれません(今でもそういうポジションではありますが)。 金融という複雑なシステムの将来を予想するという非常に難しい問いですが、例えば、日本よりも非現金化が進んでいる中国の事例などを調べてもこの問いに関する糸口が見えるかもしれませんので、ぜひお調べになってください。(더 읽기)