イナダシュンスケ:ミックスフライはとても良いものですね。僕は、海老フライ・カニクリームコロッケ・白身フライの組み合わせが好きです。贅沢が許されるなら帆立フライも入っているとテンション爆上がりですが、しれっとチキンカツなんかが紛れ込んでいると「お前はどうしてここにいるんだ？」と問い詰めたくなりつつも、なんだかちょっと得したような気もして嬉しくなります。 そんなミックスフライですが、個人的にはライスは伴わせない方が良いのではないかと思っています。確かに日本人はかつてこれを洋食化するにあたってメインディッシュの座に置き、定食カテゴリーの要のひとつとしました。しかしそのルーツである西洋料理においては、この種の料理は前菜です。ルーツだけが正しいと強弁するつもりはありませんが、僕は勝手に卓上タイムスリップを試みたくなるのです。 質問者さんの「それでは単なるフライ盛りになってしまう」という思いはわからなくもないのですが、一度この方向を検討されてみることをお勧めします。 　 これは特殊な例になってしまうかもしれませんが、僕は洋食屋さんではあまり白ごはんを食べることはありません。ミックスフライでもカツレツでも単品でいただき、然るのちにカレーライスやスパゲッティなどの「締め」をいただくパターンです。お金と時間と腹具合に余裕があれば、その前に冷菜もしくはスープ（もしくは両方）からスタートすることもあります。ミックスフライならハムサラダ、カツレツならアスパラサラダ、みたいなチョイスです。 もちろんこれは、先ずはビールでスタートすることが多いのでそうなるという面もありますが、もしお酒を飲まない場面でも同じようにすると思います。つい先日、「お酒が飲めないとレストランに行きづらい」という話をしてちょっと盛り上がりましたけど、洋食屋さんはそれを気にせずコースを組み立てて楽しめる貴重な場でもあると思います。 もちろん定食よりもお金はかかります。しかし僕は思うのです。どうしても一般的なニーズと離れたものを求めがちな周縁の民は、金で解決できることはそうすればいいのだ、と。熱いフライで熱いご飯が食べられない質問者さんは（少し珍しいベクトルですが）れっきとした周縁の民です。 　 ミックスフライは定食屋さんで登場することもあります。こちらは洋食屋さんよりいささかフリーダムであることも多いように思います。僕はから揚げがしれっと紛れ込んでいるミックスフライにも出会ったことがあります。メンチカツもあります。困惑しますが、あれはあれで良いものです。 洋食屋さんと同じパターンを応用するなら、ミックスフライの単品の後に丼物、ということになりそうですが、僕はそれはまずやりません。なぜかそれはトゥーマッチな気がしてしまうのです。 その代わり、ミックスフライをあらかた食べ終えたあたりで「定食セット」を追加します。ご飯・香の物・味噌汁のセットですね。ちょっと古臭くてストイックすぎる感覚かもしれませんが、味噌汁と香の物があれば、それだけでもライスマネージメント的にはなんとかなります。 ましてミックスフライの一部を温存してあれば鬼に金棒です。から揚げやメンチカツなどが紛れ込んでいるスタイルなら、そういうものを温存するということになります。それでも心許なければ、納豆を追加する手もあります。生卵でキメるのもいいですね。とろろとかなめ茸おろしのある素敵なお店ならなお嬉しい。 定食セットの別売りが無い店もありますが、そもそも質問者さんはご飯を冷ましたいわけですから、最初から定食でオーダーしてご飯は見て見ぬ振りをすればいいだけですね。 いや違うんだ、あくまでミックスフライでご飯を食べたいんだ、ということなら、そこは素直にテイクアウトでしょう。公園のベンチでミックスフライ、なんてのも悪くないじゃないですか。僕だったら最初にミックスフライの一部（この場合は白身フライより鯵フライが嬉しいですね）にあらかじめソースをかけておいてから、再び蓋をして蒸らしに入ると思います。この喜びはたぶん、冷め天丼に近いものがありそうですね。