第二言語習得の研究で最も有名な問い(というか仮説)は Stephen Krashen のモニターモデルに関する五つの仮説ではないかと思います。特に意識的に「学習」したことは無意識に使えるという意味での「習得」にはつながらないとする習得=学習仮説(acquisition-learning hypothesis)は大きな反響を呼び、その後、多くの研究者によって研究されました。この仮説を純粋に支持する人はいまでは少ないと思いますが、この考え方自体が研究を大きく進め、言語教育のあり方に大きな影響を与えたことは確かです。モニターモデルにはほかにもインプット仮説(input hypothesis)、モニター仮説(monitor hypothesis)、情意フィルター(affective filter)、自然習得順序仮説(natural order hypothesis)仮説などがあり、相互に関連する仮説ですが、一部は支持され、一部は多くの反証が提示され、第二言語習得に関する研究が広がり、発展する契機になりました。例えば、インプット仮説のあとには Merrill Swain によるアウトプット仮説や Michael Long によるインターアクション仮説が出てきたという具合にです。Krashen自身はインプット(聞くこと・読むこと)重視の教育を主張し、ナチュラル・アプローチとして広まり、今でも大きな影響があります。

2021/11/17Posted
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